俳句に親しむ


みどう俳壇

森田純一郎 選

 202(令和)年1月

歎異抄読み返しゐる炬燵かな

(大阪市)木村マサ子  

 老人と若者、善人と悪人、などのように分け隔てをすることなく、ただ信心のみをかなめとする、という親鸞聖人の教えを記した歎異抄を、作者は炬燵の中で何度も読み返しながら籠居しているのだ。

謫居跡見下ろしに鷹渡りけり

(岡崎市)朝雄紅青子  

 謫居とは罪を犯したり、咎めを受けた人が罰を受けて配流された辺鄙の地の住まいのことである。晩秋に南方に渡ってゆく鷹たちは、そのような謫居跡の遥か上空を群れをなして飛んで行くのである。

曲屋の馬屋まで届く炉火明り

(宝塚市)広田 祝世  

 岩手県の南部地域では馬を飼うために、主屋から鉤型に厩を接続して設けていた。こうした曲家は減少しているが、かつては上がり框に切った炉で煮炊きをし、団欒をした灯が馬屋を照らしたのだろう。

石川 多歌司

 2021(令和3)年1

阿蘇山の噴火の煙そぞろ寒

大阪市徳永由起子  

 晩秋に阿蘇山の噴火の煙を見た作者。噴火の程度と風向きによっては周辺に甚大な被害をもたらす。噴火の煙を見て、気持の上でもそぞろ寒を感じた作者の感慨が伝わる。「そぞろ寒」の季題が妙。

茶室へと誘ふ小径竹の春

草津市下村幸子  

 秋の茶会。竹は秋になると盛んに生長し性もよくなる。緑の色も濃くなり竹にとっては秋が春なのである。露地の竹の線はこれから始まる茶会の期待を盛り上げ茶人の心を弾ませるのであろう。

御堂筋銀杏黄葉の中をゆく

愛西市小川弘  

 大阪の中心街である御堂筋の銀杏並木は、秋になると一斉に黄葉となり人の心を楽しませる。久し振りに大阪に来て銀杏黄葉の御堂筋を歩いた作者の感動が平明な表現の中によく伝わってくる。

森田純一郎 選

 2021(令和3)年11月

いつ見てもたゆたふばかり雪蛍

(兵庫県)小林恕水  

 晩秋から初冬にかけて見かける雪蛍、つまり綿虫は青白く光りながら空中を浮遊している。いつ見ても空にゆらゆらと浮かんでいる雪蛍を眺めていると、何かしら憐れみを感じるようになって来る。

夕鵙や明日香どこかに煙立つ

(桜井市)村手圭子   

 実りの秋の明日香の光景は美しいが、夕暮れになると急に寂しくなって来る。殊にキリッキリッという鵙の鳴き声を聞くと人恋しさが募って来る。何処かで籾殻を焼く煙が上がっていたのだろう。

黒塀の高きにはじけ柘榴の実

(大和高田市)池之内愛   

 柘榴は秋になって熟して来ると外皮が裂けて、真っ赤な実が見えて来る。青空の下、高く張られた黒塀のさらに上にはじけた柘榴の実の赤は、さぞや鮮やかな色のコントラストを見せるのだろう。

大阪の芭蕉忌 -法要と句会-

真宗大谷派難波別院は「松尾芭蕉終焉ノ地」として、古くから俳人たちの心の故郷として親しまれています。

1921(大正10年に芭蕉翁を偲び「芭蕉忌」法要を勤めて以来、1958(昭和33)年からは「大阪の

芭蕉忌」として、毎年法要と句会を営んできました。例年11月頃に開催している同法要と句会に、有縁の皆さ

まのご参加をお待ちしています。